名もなき器 - 名もない一本の木に命を吹き込み蘇るイノチ「名もなき器」。津山銘木有馬店が銘木店として取り組む、銘木+漆の器

確かなもの

素材と素材のコラボレーション

器の中で、一流とされる漆器を並べた時に、まずあらわれる器は、
日本最大の漆器産地である輪島の輪島塗や蒔絵、螺鈿、沈金などの技工がほどこされた漆器です。
それらも素材には「木」を使用していますが、そこでは、「木」ではなく「漆の艶」と「ほどこされた技術」に重点が置かれています。
たしかに、漆塗りの技法には春慶塗りや摺漆などの杢を生かす塗りがありますが、漆の世界では「銘木を生かす」こと以上に「漆を生かす」ことに重きを置いた漆器が数多くつくられています。

銘木が持つ最大の魅力である杢目を
最大限に生かした器をつくるためにはどうすれば良いのか―。

銘木店という立場から、各種木工品・木製品の最終仕上げである「塗装」について深く学んでいく中で、
漆は、塗料のあらゆる特性において、最高グレードの塗料であることが分かりました。
「耐久性」「硬度」「耐水性」「耐溶剤性」「耐熱性」「光沢」「耐酸性」「耐アルカリ性」「耐アルコール性」
これらどれをとっても、現在あるほかの塗料に劣るものはひとつもありません。
さらに漆の塗膜は他の塗料と比べても非常に屈折率が高く、美しい艶を潜ませる自然塗料であることが分かりました。そして、その塗膜には「見る人に温もりを感じさせる不思議な力」とともに「樹木を引き立てる力」があることも分かりました。

もちろん、銘木工芸の世界では漆が塗料として万能というわけではありません。「ウレタン」「オイル」「木地」それぞれに持ち味があり、状況に応じて使い分けることでその樹木が生きてきます。
しかし、天然の樹液である漆の「艶」には、他の塗料にはない独特の深みがあり、
潤いに溢れたその「艶」は時間をかけながら、一層はっきりと木の表情を浮き彫りにしていきます。


創業36年。銘木店である私たちは、樹齢を数える銘木素材を数多く取り扱ってきました。
銘木の声に耳を傾け、銘木の言葉を理解してきた私たちが、
漆について深く学び知っていく中で、「銘木の世界」の向こう側に見えた
もうひとつのせかい「漆芸の世界」。
生きた時間を年輪に刻む樹木に、うるしの木から掻いた樹液をほどこすことで、
「杢目の生きた、すばらしい器になる。」
樹木の身と樹木の血が融合し、命とイノチが歓欣鼓舞する過程で、素材の生きた素晴らしい器になると確信しました。
漆に潜む艶が、銘木に潜む美しさを浮かび上がらせる新しい器、「名もなき器」がここに生まれました。